パームスプリングスHPのバナーでもお知らせしていますが、ミッドセンチュリーハウスのHPをリニューアルしました!
これまであちこちで書いていたアメリカのオープンハウスレポートも新たにページを作りまとめましたので、ぜひ見てみてくださいね。
さて、今回のブログはそんなオープンハウスレポートの第9弾。
モダニズム建築にはいくつか世界的に一般まで知れわたった名建築がありますが、こちらもそのひとつ。
ミース・ファン・デル・ローエが手掛けたファンズワース邸です。
アメリカのイリノイ州、プレイノ。フォックス川のたもとの緑豊かななかに佇んでいます。
現在は保全団体によって保護されていて、春から初冬にかけてツアー見学することができます。
買付けの合間に見学に訪れたのも秋が深まったころ。
シカゴから車で1時間半ほど。あたりがどんどん田舎の風景になるなかをぐんぐん走ります。
「こんな田舎町に、モダニズム建築があるの?」と車中で話したほど。
曇っていることもあり、この日はとても寒かった、、、
粉雪がチラチラまっていたところもあり、冬の訪れを感じる日でした。
そしてこの寒さが、後々ファンズワース邸の底力を強く感じさせてくれることになるのですが。
川沿いをしばらく走ると、フェンスに囲われたエリアが。
敷地入り口には簡素な横断幕。
入るとビジターセンターやギフトショップがあって、建物の解説や資料、施主である医師、Edith Farnsworthについてのパネルや映像展示が。
中で受付をして、ガイドさんや他のツアーメンバーとともにいよいよファンズワース邸へ。
ファンズワース邸があるのは、川岸の林の中。日本でも大きな河川の下流域では木が生い茂った幅の広い岸になっていますが、あの感じです。
紅葉した木々や葉をおとした木々の間を歩いて林(もはや森のようですが)を進みます。
途中はフォックス川の支流(?)もあったりして、ちょっとしたハイキングのよう。
新緑の季節も気持ちいいんだろうなー。
そして、見えてきた建物。
常緑の芝と落ち葉や赤・黄に紅葉した木々の色鮮やかな中に佇む、真っ白な建物。
骨組み以外がガラスになっているので、余計フレームの白いラインが際立っていました。
居住部分と、そこからひと続きになった屋根のあるテラス、一段下がったステージ状のデッキ部分の3構成。
鉄骨柱8本と2つの平行な平面。
鉄骨フレームがむき出しで、居住空間もおおきな一部屋を中央のボックスをつかってゆるやかにエリア分けした、みるからにシンプルな作り。
ですが、ミース・ファン・デル・ローエはこのプランを作るのに最終的に167枚もの図面を描いたそう。
彼が目指したのは、多くの人が思うこの家の印象「前衛的なアートとしての家」ではなく、豊かな自然の中で時に自然から独立し、時に自然と融和する、そんな生活ができる場所でした。
このオープンデッキはそんな思いが現れているのかもしれませんね。
さて、デッキやテラスも室内も、大理石タイルが敷き詰められています。外でのガイドを寒さをこらえて聞いたあと、室内へ移動、、と思ったら。
「靴は脱いでください」との指示が。
屋根付きテラスで靴を脱がされ、キンキンに冷えた大理石の上を歩くという拷問。
これでずっと見学するとか、無謀。
、、、と思ったら。
室内に入ると、そんなに寒くない!
足元は床暖で靴下越しに優しい暖かさ。空間も、ガラス張りで想像していた温度とは明らかにちがいます。
パームスプリングスの同時期のお家にも床暖は入っていますが、あの気候だからまかなえているんだろうと思ったら。
こんな寒い、しかもガラス張りのお家でも靴下をとおして温かさが伝わってくるなんて。
大理石だから遠赤外線的なじんわり中から温まるかんじもあるような。。
ちなみに後になってヒーティングシステムを調べたら、こんなふうにしっかりと配線されてました。
外側は線の間隔が狭くなっていて、ガラス付近の寒さをシャットアウトする工夫も。
ミース・ファン・デル・ローエ、恐るべし!です。
家具はもちろんミースデザインのもので揃えられ、インテリアはシンプルに。
ベッドはサイドテーブルがスライド式で一体になったものを作ったり、収納の扉も取っ手の金具や掘り込みなどをつけず、パネル扉を隙間をもたせて設置することで手掛けにしていたり。
随所にミースの哲学が見て取れました。
そしてこの居住空間をつくる中央のボックス。リビング側は暖炉と収納、その反対側はI型のキッチンになっています。
テラス側の短辺の中はバスルーム、その反対側は寝室エリアになっていて、ボックスの中には同様にバスルームが入っています。
当時はリビングとベッドエリアの間に、ディバイダーのようなシェルフ(本棚)があったそう。
箱の中央に配管や配線がまとめられているので、その外周にあたる居住エリアはすっきり!
カーテンもレールを綺麗におさめて目立たなくしています。
ガラスもほとんどがfixガラスで、その収まりも見事。
生活感が極力抑えられて、外の景色と溶け込むような空間になっていました。
なんといっても南側はすぐそこにフォックス川。
地面のレベルもほとんど変わらないので、デイベッドに寝そべれば川に浮いたようなそんな感覚で寛ぐことができそうでした。
部屋を出て建物の下をのぞくと、8本の柱のほか配管の太いパイプしかないのがよくわかります。
配線や配管もひとまとめにして、外観のおさまりまで考えてありました。
こういった細部まで目を配った設計が、名建築たる所以なのでしょうね。。
白いカーテンをぐるりとひけば、夜はふんわりと光る建物が浮かび上がってみえるのだろうな、、
きっとそんな姿までイメージしていたんだろうと思います。
名残惜しい気持ちもありつつ、建物をあとに。
写真などで見ていた名建築。
実際に見てみるとそのアウトラインのすばらしさはもちろんですが、細かな部分まで計算された美しさには脱帽でした。
やっぱり後世にのこるものはこういったところから違うんだな、と。
まさに、”God is in the details”。
ミースの哲学をひしひしと感じたファンズワース邸見学でした。
[おまけ]
さて、建物の下をのぞいた写真でもわかる通り、鉄骨フレームにはサビがかなり出ていました。
もちろん長年の風雨や経年によるものもあると思いますが、じつはファンズワース邸はある問題に直面しています。
それは、メインの眺望でもあるフォックス川の氾濫。
川岸に建っていることもあり、近年はとくに頻繁に浸水しているそう。
現在は、
①レベルをさらに上げる、
②移築(少しおくまった高いところ)、
③ジャッキアップ機能(水力や機械)をとりつけて氾濫時は建物(デッキ除く)を持ち上げる、
の3案を検討しています。
建物が朽ちてしまっては元も子もないですもんね。
でも、フォックス川と共存するように佇むファンズワース邸が見られなくなるのも少し寂しい気がします。
なので、個人的には一番突拍子もないとも思える③のリフトアップ案が良いかな。








































外観がこちら。
軸組工法で作られた構造体の梁をわざと見せるのも特徴です。
梁は外へだけでなく、家の中もガラスで抜けています。要するに天井が家中繋がっているのがよくわかります。
バックヤード(庭)に向けて、開放的で外と中が曖昧(in-side out-side)になっています。
窓の位置も日本の普通とは違っていて、部屋にできる陰影がとても綺麗でした。
部屋の隅に配されたガラス越しで、向こう側の景色が見えたり。
バスルームはほぼ当時のままですね。
大して寒くないのに、カリフォルニアの家には暖炉がほぼ付いています。
キッチンには天窓からの光が降り注ぎます。
ただ、、ペンキ塗りの雑さはアメリカン。このおおらかさが柔らかい雰囲気を醸し出すんですけどねー(笑)。
リノベーションらしく、今あるものに取ったり、付けたしたりして、とってもおしゃれ感が漂っていますね!
壁にすのこを貼って、隙間を利用して引っかけたり。
キリムのラグマットや窓のリネンが柔らかさを足し算。
座り心地が悪かったけど、革張りのスツールも見た目はおしゃれです。
洗面ミラーのランプは、半分覆われたはだか電球が、間接照明のようになっていました。
通常、モーテルは部屋のドア前にパーキングがあり、直接部屋に入れるようになっていますが、ここを上手くブロックで囲い、パティオスペースに。
ブロックは少し隙間をあけて風と光が通るように、積み方をデザインされています。(これはナイスアイデアですね)
パティオには、コンクリートの上にクッションを置いたコーナーソファーや、ガスで点くファイヤープレイスがあり、ここがとーってもくつろげるスペースになっていて、滞在型のホテルとして2-3泊したい(実際は1泊でした)と思う空間でした。
おまけ。でっかいマリリンモンローも居ます!
その塀の向こう側には、超素敵なプール。ここはほぼ当時(1950年ごろ)のままの状態です。
振り向くとこんなロケーション。もちろんこれもほぼ当時のままでしょうね。


























































